【本の紹介7】科学的な適職 鈴木 祐(著)
今日ご紹介する本は、鈴木祐さんの『科学的な適職』です。
本書は、これから仕事を探す人にとっては仕事を探すための視点を整理するのに役立ち、今仕事をしている人にとっては、今の仕事が自分にとって適職なのか、そして適職だと判断した場合には、どうすればより幸福度を高めることができるのかを考えるのに役立ちます。
以下、本書の内容をピックアップしながらご紹介します。
本書でいう「適職」とは、「あなたの幸福が最大化される仕事」のことです。
多くの人は、仕事を選択する際に、「視野狭窄」*1の状態で仕事を選択してしまうそうです。
本書では、「視野狭窄」の状態から抜け出し、適職を探すために、次のようなAWAKEという5つのステップに体系化しています。
- 幻想から覚める(Access the truth)
- 未来を広げる(Widen your future)
- 悪を取り除く(Avoid evil)
- 歪みに気づく(Keep human bias out)
- やりがいを再構築する(Engage in your work)
ステップ1「幻想から覚める」においては、仕事選びでハマりがちな「思い込み」を7つに整理しています。
- 好きを仕事にする
- 給料の多さで選ぶ
- 業界や職種で選ぶ
- 仕事の楽さで選ぶ
- 性格テストで選ぶ
- 直感で選ぶ
- 適性に合った仕事を求める
どれも仕事選びでは、当たり前なことのように思えますよね。しかし、これらの行動は短期的には喜びの感覚を与えてくれたとしても、長期的な人生の満足度にはなんの関係もない。それどころか下手をすれば、不幸になってしまうかもしれないそうです。
①の「好きを仕事にする」についてみていきます。
「好きを仕事」にすれば、情熱を持って仕事に取り組めると考えがちですが、いくら好きな仕事でも顧客のクレーム処理やサービス残業のような面倒は必ず発生します。そうすると、「本当はこの仕事が好きではないのかもしれない」とか「この仕事に向いていないかもしれない」との思いが生じてしまうかもしれません。
グロウス・パッション
「本当の情熱とは、何かをやっているうちに生まれてくるものだ」という考え方
「情熱は後からついてくる」という点がポイントになるそうです。
仕事への情熱は、自分がその仕事に対して注いだリソースの量に比例してくるそうです。ですから、「情熱を持てる仕事」にするためには、自分自身がその仕事とどれだけ向き合ってリソースを注ぐのかということが大切になるそうです。
このようなかたちで、7つの「思い込み」について検証してくれているので、どの指摘もとても参考になります。
次のステップ2「未来を広げる」では、仕事の幸福度を高める徳目が7つに整理されています。
- 自由: その仕事に裁量権はあるか?
- 達成: 前に進んでいる感覚は得られるか?
- 焦点: 自分のモチベーションタイプに合っているか?
- 明確: なすべきことやビジョン、評価軸はハッキリしているか?
- 多様: 作業の内容にバリエーションはあるか?
- 仲間: 組織内に助けてくれる友人はいるか?
- 貢献: どれだけ世の中の役に立つか?
これら7つの徳目が高ければ、仕事の幸福度も高くなるそうです
これらの要素を満たさない仕事の場合、どれだけ子供のころから夢に見ていた職業であろうが、誰からもあこがれられる業種であろうがが、最終的な幸福度は上がらないそうです。逆に言えば、これらの要素がそろった仕事であれば、どんなに世間的には評価が低い仕事でも幸せに暮らすことができるそうです。
今は高くない徳目であっても、どうしたらこれらの徳目を高めることができるのかという視点で自分の仕事を分析するのも大切かもしれませんね。
ステップ3の「悪を取り除く」では、職場の8つの悪について整理しています。
- ワークライフバランスの崩壊
- 雇用が不安定
- 長時間労働
- シフトワーク
- 仕事のコントロール権がない
- ソーシャルサポートがない
- 組織内に不公平が多い
- 長時間通勤
そして、幸福な仕事を探すための意思決定ツールとして次の3つが紹介されています。
どのツールを使ったとしても、なんとなく仕事を選ぶよりは成功率は高まるそうです。
ステップ4の「歪みに気づく」では、人の認知バイアスを取り除くための4つの技法が紹介されています。
私たちの意思決定力には生まれつき深刻なバイアスがあるそうです。
正しい意思決定を行うためには、綿密なデータ分析よりも脳のバグを取り除くプロトコルのほうが600%も重要である
というデータがあるそうです。
では、このバイアスとはどのようなものなのでしょうか?本書では次のようなものが紹介されています。
- 確証バイアス…自分がいったん信じたことを裏付けてくれそうな情報ばかりを集めてしまう心理
- アンカリング効果…選択肢の提示のされかたによって、まったく異なる決定をしてしまう心理現象
- 真実性の錯覚…くり返し目にしただけの理由で、その情報を「真実に違いない」と感じる心理
- フォーカシング効果…職探しにおいてあなたが重要視するポイントが、実際よりも影響力が大きいように感じられてしまう状態
- サンクコスト…いままでたくさんの時間とお金を使ってきたからという理由で、メリットがない選択にこだわり続けてしまう状態
- 感情バイアス…自分の考えが間違っているという確かな証拠があっても、ポジティブな感情を引き出してくれる情報に飛びついてしまう心理傾向
これらのバイアスを修正するためには次の4つの技法が効果を発揮するそうです。
- 10/10/10テスト
- プレモータム
- イリイスト転職ノート
- 友人に頼る
ここでは、①の「10/10/10テスト」をご紹介します。
「10/10/10テスト」は時間軸をずらすことによって、近視眼的になっている視点を長期的な視点に帰るための技法です。
- この選択をしたら、 10 分後はどう感じるだろう?
- この選択をしたら、 10 ヶ月後にはどう感じるだろう?
- この選択をしたら、 10 年後にはどう感じるだろう?
この3つについて考えるだけでも、今しか見えていない現状から抜け出し、よりよい決断をすることができるようになります。
ステップ5の「やりがいを再構築する」</span>では、「ヒエラルキー分析」や「仕事満足度評価」をおこなった結果、今の職場にいてもいいかもと判断したときに、ジョブクラフティングで「やりがい」をリノベートする7つの手順が紹介されています。
ジョブクラフティングとは、退屈で無意味にしか思えないような仕事に、あらためて深い意味を見出すための手法です。
「ジョブクラフティング」の研究で有名な心理学者ジェーン・ダットンのコメント
現代の仕事は官僚的で、いろいろなタイプの人間をひとつの型にはめようとする。仕事が退屈でドライに感じられるのも当然だ。しかし、自分の仕事を価値観にもとづいてとらえ直せばどんな職業でも深い意味が生まれる
今の仕事を続けるという選択をした方は、ぜひ「ジョブクラフティング」を通じて、今の仕事により大きな価値を見出して、仕事の幸福度アップにつなげてみてください。
【本の紹介6】図解 身近にあふれる「生き物」が3時間でわかる本 左巻 健男(著)
本書には、身近な生き物の雑学的な小ネタがたくさんあります。それぞれの生き物が、2~3ページで解説されています。
本の表紙に「思わずだれかに話したくなる」とありますが、そのとおりかもしれません。自分も、読んでから、アリとシロアリの話やミミズの話を家族に聞いてもらっちゃいました。
【アリ・シロアリ】アリはハチの仲間、ではシロアリは?
アリは、「ハチ目・スズメバチ上科・アリ科」に属する昆虫だそうです。
シロアリは「アリ」という名前がついていますが、「ゴキブリ目・シロアリ科」に属する昆虫で、ゴキブリの仲間だそうです。
【ミミズ】夏の炎天下で干からびているのはなぜ?
夏になるとアスファルト上にミミズが干からびている姿をよく目にします。ミミズは呼吸を皮ふ全体でおこなっています。土が強い太陽光を受けて熱くなったとき、体温調節のできないミミズは必死に地上へはい出てきしまうそうです。
また大雨が降った後にも出てくることがありますが、これは土の中が酸素の少ない雨水で満たされ、息苦しくなるためではないかと考えられているそうです。
【シカ】立派な角は骨じゃなくて皮ふ?
鹿の角は、毎年春に落ちてしまうそうです。そのことを落角というそうです。そして、新たに夏に向けて成長していくそうです。
最初は袋角といって、柔らかいのですが、内側には大量の血液が流れ込んで、カルシウムがどんどんたまって角を形成するそうです。
この時期は角を大事にするために、争ったりはせず、角が完成する頃に発情期を迎え、メスの争奪戦や縄張り争いをするようになるそうです。
こんな感じで、「へえ~、そうだったんだ!」とか「前にちょっと聞いたことあるけど、あまりよくわかっていなかった」という情報がたくさんあります。60種類以上の生き物について解説されているので、きっと「だれかに話したくなる」情報が載っていると思います。
分量的にもちょうど3時間程度で読める量ですので、ちょっとした空き時間に読んでみてはいかがでしょうか?
また、この本を導入として、興味を持った生き物についてもう少し詳しく調べたりしても、面白いかもしれません。
この「身近にあふれる」シリーズは、他にもたくさんあるので、そちらも読んでみたいと思います。
図解 身近にあふれる「心理学」が3時間でわかる本 (Asuka business & language book)
- 作者:内藤 誼人
- 発売日: 2018/06/12
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
【本の紹介5】モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 尾原和啓(著)
今日ご紹介する本は、尾原和啓さんの『モチベーション革命』です。
本書では、30代以下の世代を
生まれたころからすでに何もかもが揃っていたので、物や地位などを欲して頑張ることはない。 埋めるべき空白が、そもそもないのです。そう、あなたには生まれたときから「ないもの」がない。だから何かが欲しいと「乾けない」。
とし、「乾けない世代」と呼んでいます。
本書が出版されたのは3年前くらいですので、今ですと40代前半くらいまでの方が「乾けない世代」に該当するのかもしれません。
一方、それより上の団塊の世代中心とした世代を「乾いている世代」としています。
本書は、「乾けない」世代の方々にとっては、自分自身がこれからどういう方向で何をモチベーションに仕事をして行ったらいいのかという指針になります。逆に、それより上の世代の方々にとっては、「最近の若いのは…」と言う前に、そもそもモチベーションのあり方が違うので自分たちと同じような動機づけではうまくマネジメントできないということを理解したり、自分の働き方を見直したりするのによい本だと思います。
ちなみに自分はというと、「乾いている世代」と「乾けない世代の」中間くらいのちょうど過渡期的な世代なのかなと思います。
アメリカ人心理学者のマーティン・セリグマンによると、人間の欲望というのは、「達成・快楽・意味合い・良好な人間関係・没頭」の5つからなるそうです。
「乾いている世代」にとっては、「達成・快楽」といった欲望が多くなり、「乾けない世代」にとっては、「意味合い・良好な人間関係、没頭」が主な欲望となるそうです。
ですから、「乾けない世代」のモチベーションにおいても、
「自分が頑張る意味が持てるもの」に「自分が好きな人たち(家庭・友人など)」と「とことんハマる」ことを重要視する。金銭や物理的な報酬とは関係なく〝自分の好き〟を追求する。
という傾向があるそうです。
このように自分の周りに対して自分の好きなことだけをやっているような状態だと、最初は、「社会がどんどん小さくまとまる感じになっていってしまうのかな?」と思ってしまいましたが、よくよく考えると「没頭」していたら、いつの間にか世界で活躍していたということもあるのかなと思います。
尾原さんが本書で言いたのは、最初のモチベーションが、「乾いている世代」の場合は、最初から世界で活躍するということだったのが、「乾けない世代」の場合は、「好き」を追求していたら、いつの間にか世界で活躍していたという状態なのかなと…。
他に面白いなと思ったのは、「ワークライフバランス」から「ライフワークバランス」になっていくという話です。
「ワークライフバランス」というと、「ワーク」と「ライフ」のバランスをどうするのかというように「ワーク」と「ライフ」が切り離された形で、どっちを優先するのかに重点が置かれ、現在も「働き方改革」などの取り組みが行われています。
これからは「ライフワーク」、つまり、たとえお金にはならなくてもついつい取り組んでしまうような、好きで好きでたまらない〝生きがい〟がより大切になる。そして、その方が、ユーザーの潜在的な欲求や、購買意欲のツボである「インサイト(新しい視点)」をすくい上げる時代にマッチした働き方なのではないかと指摘されています。
自分の場合は、もうアラフィフなのに、まず自分の「ライフワーク」って何だろう?から始めるような状態ですが、いろいろとチャレンジしながら、振り返ったら、いつの間にか「ライフワーク」に没頭していたなんていう状態になっていたらいいなと思います。
「好き」や「没頭」って作ろうとして作れるものじゃなくて、いろいろとチャレンジしていたらいつの間にかそうなっていたという側面もあると思うので、チャレンジする部分はある程度戦略的に、でも、そこから先は運任せみたいな感じで進んでいけたらいいかなと思います。
引用ベスト3
ビジネスはプロデューサーの時代へ
すでに世の中には必要最低限のものは溢れています。今は「どう遊ぶか」までを、提案してあげなければなりません。相手の潜在的な欲求を見つけ出して、体験をプロデュースしていくのが、これからの仕事なのです。
「他人に迷惑をかけちゃいけません」という現代の呪い(ありがとうの返事はおたがいさま)
ほとんどの日本人は、小さいころから両親や学校の先生にそう言われて育ってきました。そんな人々にとって、誰かに迷惑をかけることは「悪」です。だから、常に「他人から見てどうか(迷惑になっていないか)」を気にして生きている。やがて他人の目線や他人の評価軸を取り込むことに慣れ切った人々は、何か行動を起こすときも、自分がどうしたいかより、他人から見てどうか、他人に迷惑をかけないかを一番に気にしてしまいます。
(中略)
インドでは日本の反対で、親は子に対して「あなたは誰かに迷惑をかけて生きていかなければならないのだから、他人の迷惑も受け入れてあげなさい」と言うそうです。
どうやってライフワークを増やしていくか?
「ライフワーク」の部分を広げていくには、まず自分のなかで「ライスワーク」と「ライフワーク」を明確に使い分けることが大事です。「ライスワーク」を、「ライフワークに自分が没頭できるためのお金と時間とリソースを生み出すもの」と捉えてもいいでしょう。それくらい割りきって、平日は目の前の仕事に集中して、お金を稼ぐ。そして、帰宅後や週末になったら「ここからはライフワークの時間だ」と切り替え、好きなことや自分が得意なことに時間を投資し、磨いていく。
そうしていくうちに、「好き」が「得意」になり、「お金」になり、「世界が求めること」と合致したとき、4つの点が重なり、「生きがい」で稼げるようになっていきます。そして、「ライフワーク」での稼ぎが、「ライスワーク」に頼らなくてもよくなってきたころ、あなたが「生きがい」を追求して生きていく人生が本格スタートしていくのです。